2016.07.08展覧会レポート
みなさんは無生物である生活道具に、まるで生き物としての感情があるような、何か不思議なものを感じたことはありますか?
小さい頃私は、生活道具が古くなったり、少し具合が悪くなってきて、そろそろ買い換えようかという時、絶対にそのことを声高に話してはいけないと、祖母や母に言われて育ちました。何故なら、もしその道具に古さをけなすような悪口や買い替えの相談が聞こえてしまうと、その道具が「今まで頑張ってきたのにひどい!」と怒ってしまって、突然、完全に壊れて使えなくなってしまうからなのです。母たちは、私にいくつか実際にあったことを話してくれましたが、壊れて困った割には祖母も母も、その話を面白そうに話すのが印象的でした。
このように、生活道具に人間のような心や魂のようなものがあると考えるのは、日本の妖怪の原点のひとつです。年月を経て古くなった道具に目や手足が出来て、人間のようにひょうきんに動き回る姿は、付喪神(つくもがみ)と呼ばれて古くから親しまれてきました。母たちの心の中には、このどこか笑いを誘う日本の古い妖怪、付喪神の存在が染み込んでいたのかもしれません。
さてこの夏、当館では7月5日(火)から、この付喪神たちも登場する「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」が始まりました。まずは、不思議なもの、怖いもの、可愛いものと、実に多彩な江戸時代の妖怪画をたっぷりご覧いただきます。そして時代を遡るかたちで、室町時代の絵巻や平安・鎌倉時代の地獄絵、さらには縄文時代の土偶の中に、妖怪の姿のルーツを探っていきます。それらの中には、国宝や重要文化財など貴重な美術品も含まれており、美術展としても十分楽しんでいただけると思います。そして展示の最後には、一気に現代に戻って、子ども達に人気の妖怪キャラクター「妖怪ウォッチ」が登場します。時代を越えて愛される妖怪というものを、改めて身近に感じていただければ幸いです。様々な楽しみ方ができる展覧会ですので、皆様お誘い合わせの上、是非ご来館ください。