東京の正しい門松の形を知りたい。(2003年)

2015/06/08

「一般的な」東京の門松という言い方はできますが、「正しい」という判断は難しいでしょう。
 江戸に遡って『守貞謾稿』をみると、武家の屋敷や大店の飾りには竹の添え木はないものが多く、上部を斜め切りにした竹を添え木とした松飾りは、医師などに多い飾り方としています(参考資料【資料1】~【資料3】)。
 現在の東京都市部では斜め切り口の竹に松という形が一般的なようです(【資料5】『年中行事図説』)。 これは、「長篠の戦いの故事」からという説があり、「東京はもちろん、御三家、親藩、譜代大名の地ではおおむね竹の頭は斜めに切ってある」(【資料4】『知って合点江戸ことば』)という事です。ちなみに江戸城の門松の飾り方については【資料16】『絵本江戸風俗往来 東洋文庫 50』【資料20】『徳川盛世録 東洋文庫 496』に書かれています。
 大まかにはこれが「一般的」な東京の門松という言い方はできますが、「正しい形」という判断は難しいでしょう。門松といってもその形態は様々であり、家ごとに違っていても不自然ではありません。江戸時代の門松をご参照ください(【資料18】『図説浮世絵に見る江戸の歳時記』、【資料21】『江戸時代の門松』)。また、あえて門松を立てない家もあります。(参考資料【資料6】~【資料11】、【資料17】、【資料19】に様々な飾り方例紹介)
 さらにお住まいの地域に伝わる門松について調べるのであれば、自治体が調査報告をまとめているかもしれません。(参考資料【資料12】~【資料15】)お近くの図書館にお尋ねください。

 

(参考資料)

【資料1】『ビジュアル百科江戸事情第一巻生活編』樋口清之監 NHKデータ情報部編 雄山閣出版 1991年 2105/59/1 (p.61)

【資料2】『江戸年中行事図聚』三谷一馬著 立風書房 1998年 3861/60/88 (p.258-260)

【資料3】『江戸の庶民生活・行事事典』渡辺信一郎著 東京堂出版 2000年 3861/128/000 (p.6)

【資料4】『知って合点江戸ことば』大野敏明 文芸春秋 2001年 8183/20/001 (p.175-177)

【資料5】『年中行事図説』民俗学研究会編 岩崎美術社 1975年 3860/2/80 (p.10-13)

【資料6】『日本を知る事典』大島建彦編 社会思想社 1980年 3821/158/71 (p.503)

【資料7】『三省堂年中行事事典』田中宣一・宮田登編 三省堂 1999年 3861/115/99 (p.46-49)

【資料8】『日本まつりと年中行事』倉林正次編 桜楓社 1983年 3861/3/83 (p.117)

【資料9】『日本民俗大辞典上』福田アジオほか編 吉川弘文館 1999年 3821/264/1 (p.376)

【資料10】『ものしり事典風俗編上』日置昌一著 1952年 河出書房 0310/10/2 (p.90-91)

【資料11】『民具の歳時記』岩井宏實著 河出書房新社 1994年 3839/101/94 (p.10-11)

【資料12】『台東区の年中行事』台東区教育委員会 1978年 C3631/3861/4 (p.13)

【資料13】『町田市の文化財第5集』町田市文化財保護委員会編 町田市教育委員会 1968年 C3672/7091/1-5 (p.2)

【資料14】『立川の年中行事』立川市教育委員会 1982年 C3669/3861/1 (p.13,68)

【資料15】『江東区民俗調査報告 昭和57年度』江東区教育委員会 1983年 C3625/3861/1-82 (p.1-2)

【資料16】『絵本江戸風俗往来 東洋文庫 50』菊池貴一郎著 鈴木棠三編 1991年 3821/178/91 (p.17-20)

【資料17】『江馬務著作集 第9巻 風流と習俗』 江馬務著 1987年 中央公論社 3808/10/9-S00 (門松の研究 p.280-290)

【資料18】『図説浮世絵に見る江戸の歳時記』 藤原千恵子編 河出書房新社 1997年 7218/349/97

【資料19】『 太陽 第20巻第1号,no.230(1982.1.新年特大号)』平凡社 (p.74-75)

【資料20】『徳川盛世録 東洋文庫 496』市岡正一著 平凡社 1990年 2105/131/90 (p.131-132)

【資料21】『江戸時代の門松』 名古屋市博物館 1994.1 (未所蔵)

 

(備考)

『守貞謾稿』(国立国会図書館デジタル化資料)  http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2592412/4window open  コマ番号4-5(2013年12月11日確認)

『駿河町正月賑わいの図』歌川派 天保頃(江戸東京博物館収蔵品検索) http://digitalmuseum.rekibun.or.jp/edohaku/app/collection/detail?id=0196201741&w=%90%B3%8C%8Ewindow open

『十二ヶ月の内:正月 春の遊』渓斎英泉画 江戸後期(江戸東京博物館収蔵品検索) https://www.edohakuarchives.jp/detail-11.html
『中村座辻番附(歌舞伎芝居辻番付)』天保9年正月(江戸東京博物館収蔵品検索) https://www.edohakuarchives.jp/detail-10862.html

 

(レファレンス事例集版)

http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000013875window open