東京の正しい門松の形を知りたい。(2003年)

2015/06/08

(回答)

「一般的な」東京の門松という言い方はできますが、「正しい」という判断は難しいでしょう。
【資料1】『ビジュアル百科江戸事情第一巻生活編』(樋口清之監 NHKデータ情報部編 雄山閣出版 1991年 2105/59/1 p.61)によると…
江戸に遡って『守貞謾稿』(備考※1)をみると、武家の屋敷や大店の飾りには竹の添え木はないものが多く、上部を斜め切りにした竹を添え木とした松飾りは、医師などに多い飾り方としています。
【資料2】『年中行事図説』(民俗学研究会編 岩崎美術社 1975年 3860/2/80 p.10-13)によると…
現在の都市部では斜め切り口の竹に松という形が一般的としています。
ほか、門松についてやさまざまな飾り方、詳細については下部「回答プロセス」をご参照ください。

 

(回答プロセス)

●門松についてや、様々な飾り方について
【資料1】『ビジュアル百科江戸事情第一巻生活編』樋口清之監 NHKデータ情報部編 雄山閣出版 1991年 2105/59/1 p.61
『風俗画報』『守貞漫稿』の図を引用し、武家屋敷や大店、医師などに多い飾り方を紹介。
【資料2】『年中行事図説』民俗学研究会編 岩崎美術社 1975年 3860/2/80 p.10-13
都市一般のほか各地の門松の図あり。「都会に普通に見られる太い竹と松を組み合わせた門松と呼ばれるもののほかに、なおいろいろの形式があることがわかると思う。」
【資料3】『江戸年中行事図聚』三谷一馬著 立風書房 1998年 3861/60/88 p.258-260
「けだし門松の作り方は家によって恒例があり一定していません。江戸も小家では上方同様、柱に松をうちつけました。」
【資料4】『江戸の庶民生活・行事事典』渡辺信一郎著 東京堂出版 2000年 3861/128/000 p.6-7
「各家の習わしによって、門松や注連飾りにはそれぞれの特徴がある。」
【資料5】『日本を知る事典』大島建彦編 社会思想社 1980年 3821/158/71 p.503
「家の入口に松を立てる、それも左右そろえて二本立てるというのは、大昔からの習慣ではなかった。」
【資料6】『三省堂年中行事事典』田中宣一・宮田登編 三省堂 1999年 3861/115/99 p.46-49
「門松というと、一般的に門口に二本並べて立てるものを思い浮かべるが、それだけではない。」
【資料7】『日本まつりと年中行事』倉林正次編 桜楓社 1983年 3861/3/83 p.117
「木の種類も末とは限らず、また立てる場所も床の間など、地域によって異なる。」
【資料8】『日本民俗大辞典上』福田アジオほか編 吉川弘文館 1999年 3821/264/1 p.376
【資料9】『ものしり事典風俗編上』日置昌一著 1952年 河出書房 0310/10/2 p.90-91
「なお門松に竹も仙人の愛する目出度いものだと添えるようになったのは室町時代より始まったものであるという。」
【資料10】『民具の歳時記』岩井宏實著 河出書房新社 1994年 3839/101/94 p.10-11
「今日のように表の入口の柱に一対取り付けるのは、新しい都会風である。」
【資料11】『江馬務著作集 第9巻 風流と習俗』 江馬務著 1987年 中央公論社 3808/10/9-S00 「門松の研究」p.280-290
竹の頭を斜め切りする理由について「飾松の竹は武田の首を切ったのであるとゐっているが、勿論、一笑話柄に過ぎないであらう。」
【資料12】『知って合点江戸ことば』大野敏明 文藝春秋 2001年 8183/20/001 p.175-177
東京地域に良く見られる上部を斜め切りにした竹の門松は「長篠の戦いの故事」からという説があり、「東京はもちろん、御三家、親藩、譜代大名の地ではおおむね竹の頭は斜めに切ってある」
【資料13】『年中行事大辞典』加藤友康/他編 吉川弘文館 2009年 3861/165/0009 p.187-188
「真ん中に立てる三本の太い孟宗竹は、先端を斜めに切り落としているが、直角に切りそろえる場合もあり、古くは真竹を用いたものだという。これは、いわば江戸・東京風の門松の飾り方であったが、近世~近代期の江戸・東京には実にさまざまな門松の装飾法が見られ、諸大名の藩邸前に飾られるそれも、おのおのの国もとの監修を踏襲してそれぞれに異なっていた。」
●江戸城の門松について
【資料14】『絵本江戸風俗往来 東洋文庫 50』菊池貴一郎著 鈴木棠三編 1991年 3821/178/91 p.17-20
【資料15】『徳川盛世録 東洋文庫 496』市岡正一著 平凡社 1990年 2105/131/90 p.131-132
●江戸の門松について
【資料16】『図説浮世絵に見る江戸の歳時記』 藤原千恵子編 河出書房新社 1997年 7218/349/97
【資料17】『江戸時代の門松』 名古屋市博物館 1994.1(未所蔵)(名古屋市博物館 編『江戸時代の門松 : 名古屋市博物館企画展』,名古屋市博物館,1994.1. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/13272373 (参照 2025-12-01))
【資料18】『東京史話』鷹見安二郎/著 市政人社 1940年 2136/273/40 p.34(鷹見安二郎 著『東京史話』,市政人社,昭15. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1048036 (参照 2025-12-01))
●各地の門松について
【資料19】『台東区の年中行事』台東区教育委員会 1978年 C3631/3861/4 p.13
【資料20】『町田市の文化財第5集』町田市文化財保護委員会編 町田市教育委員会 1968年 C3672/7091/1-5 p.2
【資料21】『立川の年中行事』立川市教育委員会 1982年 C3669/3861/1 p.13,68
【資料22】『江東区民俗調査報告 昭和57年度』江東区教育委員会 1983年 C3625/3861/1-82 p.1-2

 (備考)

※1『守貞謾稿』(国立国会図書館デジタル化資料) http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2592412/4 コマ番号4-5(2013年12月11日確認)
※2『駿河町正月賑わいの図』歌川派 天保頃(江戸東京博物館収蔵品検索)https://www.edohakuarchives.jp/detail-11516.html
※3『十二ヶ月の内:正月 春の遊』渓斎英泉画 江戸後期(江戸東京博物館収蔵品検索)https://www.edohakuarchives.jp/detail-11.html
※4『中村座辻番附(歌舞伎芝居辻番付)』天保9年正月(江戸東京博物館収蔵品検索)https://www.edohakuarchives.jp/detail-10862.html

(レファレンス事例集版)

http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000013875window open