2013年05月21日(火)〜07月15日(月)
2013年05月21日(火)〜07月15日(月)
米国メリーランド州にあるファインバーグ・コレクションは、米国屈指の日本美術コレクターであるファインバーグ夫妻が一代で蒐集した、江戸絵画を中心とする日本美術のコレクションです。 このコレクションの特徴は、狩野派や土佐派など官画派の保守的な作品がほとんど含まれず、江戸時代の民間画派の、自由で活気に満ちた肉筆画の作品が中心となっていることです。尾形光琳、酒井抱一らの琳派、池大雅、与謝蕪村、谷文晁らの文人画、円山応挙、呉春らの円山四条派、伊藤若冲、曽我蕭白らの奇想派、そして菱川師宣、葛飾北斎らの浮世絵など、内容は実に多彩です。また、いずれの作品も質が高く、全体として上品な雰囲気を持っていることも大きな特徴です。 本展では、このようなファインバーグ・コレクションを、日本で初めてまとまった形で紹介いたします。コレクションから選び抜かれた優品約90件を通じて、百花繚乱の江戸絵画の世界をお楽しみ下さい。
会期 |
|
||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
会場 |
江戸東京博物館 1階展示室 (東京都墨田区横網1-4-1) ・JR 総武線 両国駅西口、徒歩3分 ・都営地下鉄大江戸線「両国駅(江戸東京博物館前)」A4出口、徒歩1分 |
||||||||||||||||||||
開館時間 |
午前9時30分~午後5時30分 (土曜日は午後7時30分まで) |
||||||||||||||||||||
休館日 | 毎週月曜日 ※ただし、7月15日(月)は開館 | ||||||||||||||||||||
主催 |
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、 |
||||||||||||||||||||
協賛 |
ライオン、清水建設、大日本印刷、損保ジャパン
|
||||||||||||||||||||
協力 |
全日本空輸、セインズベリー日本藝術研究所 |
||||||||||||||||||||
監修 |
小林 忠(学習院大学名誉教授)
|
||||||||||||||||||||
観覧料 |
※中・高・大学・専門学校生の方は学生証を、65歳以上の方は年齢を証明するもの(健康保険証・運転免許証など)のご提示をお願いいたします。
※( )内は20名以上の団体料金。
※次の場合は観覧料が無料です。
未就学児童。身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)。 ※小学生と都内在住・在学の中学生は、常設展観覧料が無料のため、共通券はありません。
※前売券は2013年3月12日(火)から5月20日( 月) まで販売。
※特別展・常設展共通券の販売は、江戸東京博物館のみです。 |
||||||||||||||||||||
巡廻会場 |
■MIHO MUSEUM(滋賀・甲賀市)http://www.miho.or.jp/japanese/index.htm |
日本の皆様へ
新しい仏像が作られたときには、常に「開眼式」が行われます。これにより、その仏像に仏が宿ると信じられています。また、この儀式には、人々が生まれながらにもっている仏性を育むことを促し、個々の成長や覚醒への意識を高めるという意味もあります。
1970年代にニューヨークに住む二人の若いアメリカ人であった妻のベッツィーと私の目を開いてくれたものは、日本の江戸絵画でした。私たちには、わずかなお金しかなく、市内にあるメトロポリタン美術館という素晴らしい美術館は無料で入ることができました。
この美術館で初めて日本美術に出会い、目が奪われ、心が震えるほど美しく、魅力的なまったく新しい世界を発見することができました。
それから40年あまり、私たちは江戸絵画や屏風の研究と蒐集を通して、日本の歴史、文化、芸術に至るまで開眼されました。今回、日本の皆様と私たちのコレクションの一部を分かち合うことができ、大変嬉しく思っています。皆様が自国の江戸時代の絵画を楽しまれ、私たちと同様に、喜びと感動を感じて頂けますと幸いです。
ロバート&ベッツィー・ファインバーグ
日本美術の歴史は、遠く1万年以上前の縄文土器に始まりますが、その個性が真に確立するのは、10世紀以降13世紀までの間、平安時代(794年~1192年)の後半から鎌倉時代(1192年~1333年)の頃まで待たなければなりません。中国や朝鮮半島からの影響から比較的自由であり得たその時期に、日本列島のおだやかな自然や気候風土に適した美の伝統が形成されました。
17世紀初頭、京都の町人俵屋宗達(たわらやそうたつ)によって、装飾性に優れた日本の古典美術を復興しようとする機運が高まり、その流れは18世紀初頭の尾形光琳(おがたこうりん)、19世紀初頭の酒井抱一(さかいほういつ)、そして20世紀前半の神坂雪佳(かみさかせっか)へと受け継がれていきました。この琳派の流れこそ、日本人の、人生に対する詩的な感情や、草木や鳥、虫などの身近な自然に寄せる深い愛情を、端的に表してきた美術流派といえるでしょう。ファインバーグ・コレクションには、琳派の長い歴史を見通すことの出来る、各世代の素晴らしい作品が揃っています。
俵屋宗達(たわらやそうたつ)
「虎図」(とらず)
江戸時代/ 17 世紀 紙本墨画 1 幅
5月 7月
酒井抱一(さかいほういつ)
「 十二ヶ月花鳥図」(じゅうにかげつかちょうず)
江戸時代/ 19 世紀 絹本着色 12 幅対
鈴木其一(すずききいつ)
「群鶴図屏風」(ぐんかくずびょうぶ)
江戸時代/ 19 世紀 紙本金地着色 2 曲1 双
各地に群雄が割拠した戦国の世が終り、日本全国が統一された江戸時代(1603年~1867年)になると、徳川幕府という武家政権が江戸(現代の東京)の地に開かれ、中国で発達した儒学を正統的な思想および政治理念として尊重することになりました。儒学的な教養や漢詩文の愛好は、武家階級にとどまらず町人や農民にまで広く浸透し、中国の知識人(文人)の文化、ひいては生活スタイルそのものまでもが憧れの対象となりました。
美術の分野でも、中国文人画の学習が流行し、明代(1368年~1644年)から清代(1616年~1912年)にかけて出版された木版の本(画論や画譜)から、あるいは長崎にやってきた画家や舶載された実物の絵画を通して、絵画理念や描き方を熱心に学んだのでした。はじめは武家の知識人によってうながされた日本文人画の歩みは、町人の池大雅(いけのたいが)や農民出身の与謝蕪村(よさぶそん)などの庶民によっても受け継がれ、日本人独特の感性をのびやかに発揮した新鮮な美の領域を開拓していきました。
池大雅(いけのたいが)
「孟嘉落帽・東坡戴笠図屏風」(もうからくぼう・とうばさいりゅうずびょうぶ)
江戸時代/ 18 世紀 紙本墨画淡彩 6 曲1 双
与謝蕪村(よさぶそん)
「 寒林山水図屏風」 (かんりんさんすいずびょうぶ) 江戸時代/ 18 世紀 紙本金地墨画 2 曲1 隻 |
江戸時代の官画派である狩野派や土佐派は、絵の手本を中国と日本の古典絵画に求めて、自然の形態や現実の風景を写そうとする姿勢から遠ざかっていきました。狩野派に学んでその弊害を悟った円山応挙(まるやまおうきょ)は、物の形や実景を忠実に写す“写生“の重要性を自覚し、実践して、みずから新鮮な作品を世に送り出し、そのかたわら多くの門弟を育てました。共鳴者である呉春(ごしゅん)とともに興した円山四条派は隆盛を極め、やがては動物画を得意とした森狙仙(もりそせん)の森派(大坂に活躍)や岸駒(がんく)の岸派(京都に活躍)なども派生して、竹内栖鳳(たけうちせいほう)ら近代の関西日本画壇の基礎を築いたのでした。ただし、彼らの写生画は外面的な形似にとどまって物の本質にまで鋭く迫るものとはならず、装飾的な効果を追い求めるものでもありました。富を得た庶民層が生活空間の美化を実現する対象として、京都・大坂を中心とする関西圏に活躍した画家たちの写実的な装飾絵画は、もっともふさわしく、願わしいものだったのです。
円山応挙(まるやまおうきょ)
「孔雀牡丹図」(くじゃくぼたんず)
江戸時代/ 明和5 年(1768) 絹本着色 1 幅
徳川幕府と各地の大名による武家支配の時代にあっては、現状を保守する姿勢こそが正しくて、革新を求める態度は危険視され、忌避されました。美術界にあっても例外ではなく、武家に寄生する権威的な存在は、新たな画風の展開に消極的でした。一方で経済的な力を増した庶民層は、自分たちの文化や美術を育てるようになり、斬新な個性の登場を待望するようになります。保守よりも革新、停滞よりも前進、常識的な判断よりも大胆な発想、表現上では従来誰も試みなかった型破りな造形を、積極的に歓迎したのでした。
江戸の狩野派中枢に反発した狩野山雪(かのうさんせつ)をはじめとして、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)、曾我蕭白(そがしょうはく)、長沢蘆雪(ながさわろせつ)らはみな、自由で文化的な環境の京都に活躍し、次代の主流となっていた保守的な美術思潮に異を唱え、反発したのでした。彼らの、奇想に発した個性的な造形は、時代を超えた今、異端というよりも正統的な創造として高く評価されています。
曾我蕭白(そがしょうはく)
「 宇治川合戦図屏風」(うじがわかっせんずびょうぶ)
江戸時代/ 18 世紀 紙本着色 6 曲1 隻
第5章 都市生活の美化、理想化 浮世絵
古代・中世の時代にも、宮中の行事など貴族の日常を描く絵や、上からの目線で庶民の生活相を報告した絵画は存在しましたが、画家が同時代の人々の生き様を率直に写し出した真の意味の風俗画は、16世紀後半以降、いわゆる近世に入ってから生まれました。桃山時代から江戸時代初期に京都で流行した風俗画は、やがて新しい権力の所在地になった江戸にその場を移し、浮世絵という新しいジャンルによって受け継がれていくことになります。
浮世絵は木版による版画を表現手段として大衆化していきますが、絵筆で一点一点制作するいわゆる肉筆画も、一部の富裕層に好まれ、盛んに描かれたものでした。遊郭や芝居小屋など遊興の地に取材して、都市生活の華やぎを美しく理想化して表す一方で、説話や物語、あるいは芸能で親しい故事人物も描いています。全国から江戸に往来する人々のみやげ物としても機能した浮世絵は、誰にも分かる平易な表現を特色としましたので、現代の私たちにも共感しやすい表現内容となっています。
礒田湖龍斎(いそだこりゅうさい)
「松風村雨図」(まつかぜむらさめず)
江戸時代/ 18 世紀 絹本墨画金泥 3 幅対
|
■ファインバーグ・コレクションの魅力を語る特別講演会の参加者を募集
今回、日本で初めてまとまった形で紹介される「ファインバーグ・コレクション」。
その魅力を、本展を監修している小林忠・学習院大学名誉教授が余すところなく紹介する特別講演会が6月8日(土)に開催されます。 参加をご希望の方は以下の参加条件、申し込み方法をご覧ください。
【ファインバーグ・コレクション展 特別講演会】
~概 要~
◆講演者 小林忠(本展監修者、学習院大学名誉教授)
◆テーマ ファインバーグ・コレクションの魅力
◆開催日 6月8日(土)午後2時開演(午後1時半開場予定) 終了しました。
※講演時間は1時間半程度を予定しています。
◆会場 江戸東京博物館 1階ホール
~参加条件~
参加は無料ですが、事前の申し込みが必要です。また、講演会当日に会場で「ファインバーグ・コレクション展」のチケット(半券も可)の提示が必要となります。
~申し込み方法~
往復はがきでお申し込みください。「往信」面に、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、希望人数(2名まで可)を明記し、「返信」面にも郵便番号、住所、氏名を記入して、次の住所へお送りください。
〒104-8325(住所不要)読売新聞文化事業部『ファインバーグ展講演会』係
◆締め切り 5月21日(火)消印有効 終了しました。
◆定員 400名 ※応募者多数の場合は抽選となります。
〈お問い合わせ〉 読売新聞文化事業部 03-5159-5874
(平日 午前10時~午後5時半)
■プレスリリース、写真のご用命は、
「ファインバーグ・コレクション展 江戸絵画の奇跡」 東京会場
広報事務局までお願いいたします。 電話: 03-6863-3409