企画展 5F

2021年07月17日(土)〜09月05日(日)

企画展「相撲の錦絵と江戸文化」

 

 江戸時代、相撲観戦は庶民の娯楽としてひろまり、プロ力士集団の活躍により18世紀末頃に隆盛を極めます。この頃、時を同じくして黄金期を迎えたのが、多色摺たしょくずりの木版画「錦絵」です。役者絵や美人画の発展にともない、それまでの画一的で素朴な相撲版画から、力士ごとに異なる体形や顔の特徴を捉えた相撲錦絵が登場します。力士の姿や相撲観戦の賑わいを臨場感たっぷりに伝える相撲錦絵は、興行の熱狂を支えた立役者であり、スター力士が人気を誇るためにもなくてはならないものでした。

 本展では、相撲博物館と国立劇場の協力を得て、相撲錦絵を中心に、江戸の相撲の多様な魅力を紹介します。

 

【えどはく学芸員が見どころ紹介】企画展「相撲の錦絵と江戸文化」

 

企画展「相撲の錦絵と江戸文化」PR動画30秒

開催概要

会期

2021年7月17日(土)~9月5日(日)

会場

東京都江戸東京博物館 常設展示室内 5F企画展示室

電話番号:03-3626-9974(代表)

 

・JR 総武線 両国駅西口より徒歩3分

・都営地下鉄大江戸線 両国駅A4出口より徒歩1分

・都バス 錦27・両28・門33系統 墨田区内循環バス「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん(南部ルート)」 「都営両国駅前(江戸東京博物館前)」より徒歩3分

 

※当館への入館経路はこちらをご覧ください。

 

※本展会期中は当館駐車場及び駐輪場がご利用いただけません。車でご来館予定の身体障害者手帳等をお持ちの方は、事前に当館までご相談ください。

開館時間 午前9時30分~午後5時30分
※入館は閉館の30分前まで
休館日

7月19日、8月10日・23日

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館

協力

公益財団法人日本相撲協会 相撲博物館、独立行政法人 日本芸術文化振興会

観覧料金  常設展観覧料でご覧になれます。

観覧料
一般

600円(480円

大学生・専門学校生 480円 (380円)
中学生(都外)・高校生・65歳以上 300円 (240円)
中学生(都内)・小学生以下 無料

 

※学生、中高生の方は学生証を、65歳以上の方は年齢を証明できるものをご提示ください。

 

※次の場合は常設展観覧料が無料です。身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)。

 

展示構成

 第1章 黄金期の幕開け

 

 江戸時代、相撲観戦は庶民の楽しみとなります。

 18世紀末には、強豪力士を格付ける「横綱」が登場し、将軍が江戸城内で相撲を直々に観覧する「上覧相撲」が催されました。将軍のお墨付きを得て、相撲の社会的地位は飛躍的に向上します。

 その背景には空前の相撲ブームがありました。なかでも世間を沸かせたのが、初の横綱となった二人の力士、谷風たにかぜ梶之助かじのすけ(1750-1795)とそのライバル小野川おのがわ喜三郎きさぶろう(1758-1806)。勝川かつかわ春章しゅんしょう(1743-1792)とその一派は、彼らの個性を捉えた似顔絵や取り組みの光景を描き、興行の熱狂を伝えました。

 谷風や小野川が活躍した天明てんめい寛政かんせい年間(1781-1801)、多色摺たしょくずりの木版画「錦絵にしきえ」もまた、東洲斎とうしゅうさい写楽しゃらく(生没年不詳)や喜多川きたがわ歌麿うたまろ(1753-1806)といったスター絵師の名が飛び交う黄金期を迎えていました。

 

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野見宿彌像

江戸後期 18世紀

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谷風梶之助

勝川春亭/画

1798-1820年(寛政10-文政3)

相撲博物館所蔵

 

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横綱授与の図
勝川春英/画
1789年(寛政元)頃
相撲博物館所蔵

 

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谷風梶之助横綱免許状

1789年(寛政元)

相撲博物館所蔵

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谷風梶之助の横綱
個人蔵

 

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小野川 谷風 引分の図
勝川春英/画
1791年(寛政3)頃

 

 第2章 力士と絵師の協奏

 

江戸えどハ此地の名物にして、芝居しばい歌舞伎かふき新吉原しんよしハら花魁たゆう、あるハすまひとりの立すがた、いづれも彩色さいしきこまやかにして、うこくが如くわらうが如く―

秋里籬あきざとりとう編『東海道名所図会』(1797年刊)

 

 役者絵で一家を成した春章の円熟期と、天明・寛政年間(1781-1801)の谷風・小野川の活躍期が重なったことは、浮世絵と相撲の双方にとって幸運でした。勝川派の絵筆は力士にも及び、面貌や表情のみならず、体格や肉付き、土俵入どひょういりや取組の姿態にいたるまで、各々の特徴を捉えました。個性あふれる相撲取の姿が役者絵や美人画と並んで江戸市中を彩り、観衆であふれかえる取組の光景は興行の熱狂を喧伝しました。

 東洲斎写楽の約10カ月というあまりに短い作画期も、そのブームと重なっていました。

 文政年間(1818-1830)に勝川派の絵師が相次いで没すると、役者絵とともに相撲絵も歌川派の独壇場となり、なかでも売れっ子の歌川国貞(1786-1865)は、千数百点にのぼる相撲絵をのこしたといいます。

 相撲と錦絵、力士と絵師は、相互に刺激し合い支え合いながら人々を魅了し続けました。

 

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江都勧進大相撲浮絵之図
勝川春章/画
1788年(天明8)
相撲博物館所蔵

 

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高根山宗吉

勝川春英/画

1815-1819年(文化12-文政2)

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柏戸宗五郎

勝川春英/画

1811-1818年(文化8-文化15)

 

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寛政力士群像

1794年(寛政6)以降

相撲博物館所蔵

 

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稲妻雷五郎
歌川国安/画
1829-1832年(文政12-天保3)

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不知火諾右エ門 横綱土俵入の図
歌川国貞(初代)/画
1840-1844年(天保11-15)

 

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小柳荒馬取組図

歌川国貞(初代)/画

1839-1844年(天保10-15)頃

 

 第3章 相撲と錦絵と都市・江戸

 

―江都繁華の中、太平を鳴らすの具、二時の相撲、三場の演劇、五街の妓楼に過ぐるは無し―

寺門てらかど静軒せいけん江戸えど繁昌記はんじょうき』(1832-36年刊)

 

 江戸の繁華の代表は、年二回の相撲、三座の歌舞伎、五町から成る吉原である。江戸の繁栄の様子を綴った『江戸繁昌記』の序文で、作者の寺門静軒はそう述べます。

 『江戸繁昌記』が書かれた頃、1833年(天保4)10月、それまで各所で行われていた相撲の興行は、両国回向院えこういん境内に固定されます。回向院や両国橋、隅田川と相撲の組み合わせが定着し、両国は相撲の町になっていきます。さらに相撲は、興行以外でも、さまざまなかたちで人々の生活に根付いていきました。

 相撲にまつわる言葉とイメージは、人々の暮らしに染み渡り、今日に引き継がれています。

 

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両国大相撲繁栄図

歌川国郷/画

1847-1852年(弘化4-嘉永5)

 

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大相撲仕組絵之図
歌川国安(初代)/画
1815-1842年(文化12-天保13)

 

 

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銘酒つくし
江戸時代後期

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土俵軍配意匠煙草盆
珉雪斎久甫/銘
江戸時代後期

 

関連事業

 えどはくカルチャー「相撲と錦絵―黄金期の協奏―」

 

春木晶子(当館学芸員)

8月19日(木)14:00~15:00

*事前予約制。申込締切日7月30日(金)。

 

応募方法や受講料などの詳細はこちらをご覧ください。