企画展 5F

2021年03月09日(火)〜05月09日(日)

企画展「市民からのおくりもの2020―令和元年度 新収蔵品を中心に―」

 

 東京都江戸東京博物館では、江戸東京の歴史と文化に関する資料を収集し、それらを未来へ伝えるために保存管理しています。また、資料が持つ様々な情報について調査研究を行い、その成果を展示などで公開しています。

 本展は、当館が新たに収蔵した資料を、みなさまにご覧いただく展覧会です。令和元年度・2年度も多くの資料を当館の収蔵品に加えることができました。資料をご寄贈くださった方々への感謝の意も込めて、この中から厳選してご紹介いたします。

 8代将軍徳川吉宗が1745年(延享2)に徳川家康百三十回忌の法要を盛大に営んだ時の行列を描いた華麗な絵巻「紅葉山もみじやま八講はっこう法会ほうえ図巻ずかん」、勝海舟の父・小吉こきち(1802~1850)が自身の半生を語った貴重な自伝「夢酔むすい独言どくげん」、喜多川歌麿が望月5図を描き蔦屋重三郎が1789年(寛政元)に出版した豪華な狂歌絵本「きょうげつぼう」、日本初のオリンピック招致活動に際し東京市が1933年(昭和8)に制作したアルバム「Tokyo Sports Center of the Orient(東洋のスポーツ中心地東京)」など、バラエティー豊かな江戸博コレクションの世界をお楽しみください。

 

【えどはく学芸員が見どころ紹介】企画展「市民からのおくりもの2020―令和元年度 新収蔵品を中心に―」

 

開催概要

会期

2021年3月9日(火)~5月9日(日)

※会期中に一部の資料の展示替があります。4月5日(月)は展示替日

会場 東京都江戸東京博物館 常設展示室内 5F企画展示室

電話番号:03-3626-9974(代表)

 

・JR 総武線 両国駅西口、徒歩3分
・都営地下鉄大江戸線 両国(江戸東京博物館前)駅A3・A4出口、徒歩1分
・都バス:錦 27 ・両 28 ・門 33 系統、墨田区内循環バス「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん(南部ルート)」「都営両国駅前(江戸東京博物館前)」下車、徒歩3分

開館時間 午前9時30分~午後5時30分
※入館は閉館の30分前まで
休館日

月曜日(4月26日、5月3日は開館)

主催 東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館
観覧料金  企画展は常設展観覧料でご覧になれます。

観覧料
一般 600円 (480円)
大学生・専門学校生 480円 (380円)
中学生(都外)・高校生・65歳以上 300円 (240円)
中学生(都内)・小学生以下 無料

 

*(  )内は20名以上の団体料金。

 

*学生、中高生の方は学生証を、65歳以上の方は年齢を証明するものをご提示ください。

 

*次の場合は常設展観覧料が無料です。身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)。

 

*新型コロナウイルス感染症の状況によって、会期・開館時間・観覧料・各種割引サービスを変更する場合がございます。最新の情報を当館のホームページでご確認のうえ、ご来館ください。

 

 

展示構成

 第1章 将軍家の権威と旗本・豪商

 江戸時代は武士が統治する時代でした。その頂点に立つのが将軍です。徳川将軍家は先祖を敬い、その姿を肖像に写し、盛大な法要を営んできました。特に初代将軍家康は東照大権現として神格化され、多くの肖像画が残されています。徳川家康の百三十回忌にあたる1745年(延享2)3月、8代将軍吉宗は江戸城内紅葉もみじやま東照宮とうしょうぐうで法要を盛大に挙行しました。この華麗な法要を描いた絵巻「紅葉山もみじやま八講はっこう法会ほうえ図巻ずかん」は本展で注目の資料です。また徳川家関係資料としては、水戸藩9代藩主徳川斉昭なりあき九男・茂政もちまさと岡山藩8代藩主池田慶政よしまさの長女・萬壽子ますこの婚礼に際して制作されたと思われる黒棚も収集しました。

 江戸幕府はその長い治世を幕臣に支えられてきました。旗本勝家の養子となったかつ小吉こきち(勝海舟の父)の回顧談「夢酔むすい独言どくげん」や、御庭番の和多田家伝来の短刀は、武士の暮らしの一端を伝えています。

 城下に目を移せば、江戸には多くの豪商たちがいました。薬種問屋と質屋を兼業し、大名相手の貸金業を営んだ湯島の豪商、笹屋山中家代々の貴重な肖像画や、三井家に伝来した婚礼調度の長持ながもち、江戸屈指の豪商である川村家に伝わったとされる図面をもとに作成した茶の湯起こし絵図などを通して、豪商の豊かな生活をご覧いただきます。

 

紅葉山八講法会図巻

紅葉山八講法会図巻(部分)
江戸中期
会期中 巻き替あり

 

葵蝶紋鶴亀松竹梅七宝繋蒔絵黒棚

葵蝶紋鶴亀松竹梅七宝繋蒔絵黒棚
1864年(元治元)頃

 

夢酔独言

夢酔独言
勝小吉/筆
1843年(天保14)

夢酔独言表紙

 

 第2章 江戸が育てた美と技の世界

 人々が集う江戸では、著名な文人や職人を輩出した美の世界が花開きました。

 江戸を代表する絵師・文人の酒井さかい抱一ほういつ(1761~1828)が1809年(文化6)下谷したや大塚おおつか(現・台東区根岸5丁目付近)に構えた雨華庵うげあんは、抱一の活動の拠点であると同時に、江戸琳派りんぱの絵師達の学びとなり、その後明治時代に至るまで文化人たちの交遊の場となりました。ここでは雨華庵に掲げられた木額など、抱一とその周辺の人々との交流を伝える絵画や工芸品をご紹介いたします。

 また浮世絵版画は、江戸に住む人々の生活や町の姿を描きました。緻密な描写の銅版画、吉原を描いた紅摺絵べにずりえきょく独楽ごまや象などの見世物の様子を伝える錦絵を通して当時の江戸の様相を、また喜多川きたがわ歌麿うたまろが描き、蔦屋つたや重三郎じゅうざぶろうが版元となって出版した豪華な狂歌絵本「狂月坊きょうげつぼう」では、浮世絵版画の高度な技術をご覧ください。

 さらに江戸の伝統を受け継ぐ華やかな装飾と釣りを楽しむための工夫と技巧が施された江戸えど和竿わざお、江戸から明治にかけて活躍した彫金師ちょうきんし府川ふかわ一則かずのりの代々が製作した精緻な金工品、東京の籐工芸製品を写した写真などから、現代にも伝わる江戸の工芸の世界に触れていただきます。

 

「雨華庵」額

「雨華庵」額
酒井忠実/書
1817年(文化14)

 

大日本金龍山之図

大日本金龍山之図
亜欧堂田善/画
1804~1818年(文化年間)頃

 

 

狂月坊

狂月坊
喜多川歌麿/画 蔦屋重三郎/版
1789年(寛政元)
会期中 頁替あり

小柄 魔迦大黒天神

小柄こづか 魔迦まか大黒だいこく天神てんじん
府川一則(初代)/作
1864年(元治元)正月15日

 

 第3章 大東京-発展する都市

 本章では、絵葉書、写真、生活の道具など様々な資料を通して、東京の近代史をご案内します。

 明治以後、東京に西洋の風俗が入ると、錦絵や印刷物にその様相が記録されるようになりました。近代化とともに東京には様々な新名所が誕生しました。また、数多くの博覧会が催され、特に1914年(大正3)に上野で開催された東京大正博覧会は、多くの観客を集めました。

 繁栄を続けた東京ですが、1923年(大正12)9月1日の関東大震災で壊滅的な被害を受けます。この時、「関東大震災絵葉書」など、数多くの絵葉書が作られ、当時の惨状を今日に伝えています。震災後の復興事業で、東京は新しい街並みに生まれ変りましたが、その後は政府高官を歴任した高橋是清これきよが暗殺された二・二六事件が起こるなど、次第に不穏な時代を迎えます。高橋是清のご子孫から寄贈された資料から、彼の人となりをご紹介いたします。

 

東京両国橋之図 長サ九拾二間幅六間

東京両国橋之図
月岡芳年/画
明治初期
展示期間:3月9日~4月4日

 

絵葉書 御成婚奉祝花電車

絵葉書 御成婚奉祝花電車
1924年(大正13)

 

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絵葉書 大正12.9.1東京大震災実況 本所方面 二重橋前避難者雑踏の状況
1923年(大正12)

 

 第4章 首都東京-戦争から復興へ

 首都東京は災害のみならず、戦争でも大きな破壊を経験しました。本章では昭和の戦争と復興、そして平成まで続く時代をご紹介いたします。

 震災からの復興後、高まる戦時色の中で1941年(昭和16)に太平洋戦争が勃発し、東京は戦時体制から敗戦、続く占領下の困窮と混迷の時代、復興までの長い道のりを歩みました。占領下の時代に日本で作られた柱時計や困窮を乗り越える為の生活指南書、復興後の大衆旅行時代の隆盛を示す鉄道記念乗車券など様々な資料で、その歴史を垣間見ることができます。また、高度成長期を経た後も、東京を中心に街や人を撮影しつづけた師岡もろおか宏次こうじの写真は、変わりゆく時代の様子を克明に記録した資料といえます。

 戦争はオリンピック開催にも大きな影響を与えました。1940年(昭和15)に開催が予定されていた東京オリンピックは、日中戦争激化のため幻となりました。しかし1964年(昭和39)、第18回オリンピックの開催によって、東京はその復興と世界都市への成長を全世界に知らしめることとなりました。

 

Tokyo Sports Center of the Orient 「東洋のスポーツ中心地東京」

Tokyo Sports Center of the Orient「東洋のスポーツ中心地東京」
1933年(昭和8)

柱時計(Made in Ocupied Japan)

柱時計(Made in Ocupied Japan)
栄計舎/製造
昭和20年代

 

銀座4丁目 4丁目交差点(和光より撮影)

銀座4丁目 4丁目交差点
師岡宏次/撮影
1973年(昭和48)