企画展 5F

2019年10月22日(火)〜12月01日(日)

18世紀ソウルの日常-ユマンジュ日記の世界 

 

現在のソウルが漢陽ハニャンと呼ばれていた1755年に生まれたユマンジュ(兪晩柱)は、21歳になった1775年1月1日から死没する直前の1787年12月14日までの間、およそ13年間にわたって日記を書き続けました。ユマンジュは自らの日記に「欽英フムヨン」と名前をつけ、日々の出来事ばかりでなく、心のなかの葛藤までも、ありのまま克明に記録しました。

 本展覧会では、ユマンジュが遺した貴重な日記のうち、1784年の1年間を取り上げ、彼の暮らしぶりをとおして漢陽の風景やそこに暮らす人々の日常生活を紹介します。地方に赴任した父にかわって家長をつとめながら、少しでもよい住環境をもとめて新しい家に引っ越そうと奮闘したり、あるいは科挙受験に失敗して打ちひしがれたりしながら、この時代を誠実、かつ懸命に生きたユマンジュの姿を当時の社会を彩る様々な資料とともに展示します。

開催概要

会期 2019年10月22日(火・祝)~12月1日(日)
会場 東京都江戸東京博物館 常設展示室内 5F企画展示室

電話番号:03-3626-9974(代表)

 

・JR 総武線 両国駅西口、徒歩3分
・都営地下鉄大江戸線 両国(江戸東京博物館前)駅A4出口、徒歩1分
・都バス:錦 27 ・両 28 ・門 33 系統、墨田区内循環バス「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん(南部ルート)」「都営両国駅前(江戸東京博物館前)」下車、徒歩3分

開館時間 午前9時30分~午後5時30分 土曜日は午後7時30分まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日 10月28日(月)、11月5日(火)、11月11日(月)、11月18日(月)、11月25日(月)
主催  東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、ソウル歴史博物館
観覧料金  企画展は常設展観覧料でご覧になれます。

観覧料
一般 600円(480円)
大学生・専門学校生 480円(380円)
中学生(都外)・高校生・65歳以上 300円(240円)
中学生(都内)・小学生以下 無料

 

*(  )内は20名以上の団体料金。

 

*中・高・大学・専門学校生の方は学生証を、65歳以上の方は年齢を証明するものをご提示ください。

 

*次の場合は常設展観覧料が無料です。身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)。

 

*シルバーデー(11月20日)は、65歳以上の方は常設展観覧料が無料です。年齢を証明できるものをご提示ください。

 

*家族ふれあいの日(11月16・17日)は、都内にお住まいの方で、18歳未満のお子様をお連れの保護者の方2名までの料金が半額となります。保護者が都内在住者であることを証明できるものをお持ちください。

 

展示構成

 第1章 漢陽の士人ソンビ、ユマンジュ

 ユマンジュは当時有名な文臣であった兪漢雋ユハンジュンの息子として産まれました。彼の一族の杞渓兪氏キゲユシは、漢陽を代表する名門家のうちのひとつで、多くの官僚を輩出したことで知られています。彼らは当初、漢陽の北部にある北村ブクチョンに主に住んでいましたが、18世紀中盤に入ると、分家の一部は漢陽南部の南村ナムチョンに移住する者も居ました。北村で幼少期を過ごしたユマンジュも10歳になった年、南村に定着し、生涯そこで過ごしました。

 18世紀後半の漢陽は政治的な安定がもたらされ、経済的な状況も順調で、農業の生産力が増加し、商業と手工業も大きく発展しました。貨幣経済が浸透し、医療や文化の一部も商品として消費されるものがあらわれました。本章ではユマンジュが生活していた18世紀後半漢陽の様子と彼の日記「欽英フムヨン」について紹介いたします。

 

欽英_表紙 欽英_2

ユマンジュの日記

欽英 1784年

ソウル大学校 奎章閣韓国学研究院蔵

都城大地図

漢陽の地図

都城大地図 18世紀後半

ソウル歴史博物館蔵

 

 

 第2章 1784年の日記を読む

 1784年はユマンジュが30歳を迎える年です。戦争によってもたらされた過酷な飢饉も峠を越え、正祖(第22代王1752~1800)の即位8年目を迎えた朝鮮は、政治的にも経済的にも安定していました。

 この年は父にかわって家長をつとめながら、少しでもよい住環境をもとめて新しい家に引っ越そうと奮闘したり、地方に赴任中の父がいる海州に旅行するなどの出来事もありました。ここでは1784年の日記に書かれた内容を一部抜粋し、ユマンジュの暮らしぶりと漢陽に暮らす人々の日常生活を月ごとに紹介いたします。

 

 ■1月 新年を迎える 

 

歳画板 寿星老人図絵
新年の厄除に貼り出した版画の板木
歲画板 朝鮮後期(1592-1863)
ソウル歴史博物館蔵
正月の縁起物として飾られた寿老人の絵
寿星老人絵図  朝鮮後期(1592-1863)
京畿大学校 博物館蔵

 

 ■閏3月 花見をする

 

2-3-1 2-3-2

両班の必需品

合竹扇 朝鮮後期(1592-1863)

ソウル歴史博物館蔵

ユマンジュお気に入りの場所、夕陽樓

鱗坪大君房全図(複製) 1792年

ソウル大学校 奎章閣韓国学研究院蔵

 

 ■4月 海州と平壌を遊覧する

 

Collection

朝鮮時代に制作された最も大きい朝鮮全図

東輿図 1856-1872年

ソウル歴史博物館蔵 重要文化財

Collection

平壌周辺の景観を描いた絵

箕城図屏風 19世紀

ソウル歴史博物館蔵 ソウル市有形文化財

 

 ■6月  煙草を贈る

 

2-6-1 2-6-2

煙草を保管する箱

煙草盆 朝鮮後期(1592-1863)

ソウル歴史博物館蔵

正祖が煙草などの下賜を命じた書類

正祖御札(複製)1792年

成均館大学校 博物館蔵

 

 ■7月  眼の病気に悩まされる

 

Collection 2-7-4

薬を保管する携帯用の薬箱

携帯用薬箱 朝鮮後期(1592-1863)

ソウル歴史博物館蔵

王の命令で編纂された最も有名な医書

東医宝鑑 朝鮮後期(1592-1863)

ソウル歴史博物館蔵

 

 ■8月 新しい家に引っ越す

 

2-8-1

16年間に6回も転売されたことを示す家屋の売買証文

漢城府家舎売買明文(複製)1757-1773年

韓国土地住宅博物館蔵

 

 ■9月 官僚登用試験、科挙を受ける

 

2-9-1 Collection Collection

科挙の合格証

鄭東愼文科紅牌 1784年

ソウル歴史博物館蔵

科挙の合格祈願の贈り物として描かれた鯉の絵

躍鯉図18世紀

ソウル歴史博物館蔵

読んだ本の回数を数える道具

書算 朝鮮後期~末期(1592-1897)

ソウル歴史博物館蔵              

 

 ■10月  本を購入する

 

Collection

本棚と本を中心に様々な文房具を描いた屛風

冊架図屏風 19世紀

ソウル歴史博物館蔵

 

 ■11月  実学者、洪大容のお宅を訪ねる

 

Collection

定められた時刻に鳴るようにつくられた時計

自鳴鐘 朝鮮後期(1592-1863)

高麗大学校 博物館蔵

 

 

 第3章 ユマンジュの夢とその後

 1784年は、ユマンジュの一族にとって比較的平穏な年でした。しかし良い時代はそれほど長く続きませんでした。海州牧ヘジュモク(現在の黄海道周辺)で起きた重大な犯罪を的確に処理できず、父がその責任を負って免職された1785年以降、一族の暮らしは急速に悪化していきました。

1787年5月12日、長男久煥クファンがこの世を去りました。長男が亡くなってから数日間、日記は書かれず、同じ年の12月14日に終わってしまいます。日記が途絶えてから1か月余り経った1788年1月29日、ユマンジュも33年の短い生涯を静かに終えました。ここではユマンジュの父、兪漢雋ユハンジュンが残した文献を紹介します。

 

3-1 Collection

ユマンジュの父親ユハンジュンの肖像画

兪漢雋ユハンジュンの肖像画(複製) 1800年

ソウル大学校 奎章閣韓国学研究院蔵

息子を亡くした父親の悲痛な思い

杞渓文献 兪致雄ユチウン著 20世紀

明知大学校 図書館蔵

 

 

関連事業

 えどはくカルチャー 企画展関連講座

 11月19日(火)

 会場:江戸東京博物館1階 大ホール

 

■「18世紀ソウルの日常」展のみどころ 講師:市川 寛明(学芸員)

午後1時30分から2時20分まで

 

■風水都市漢城と現代ソウル 講師:吉田 光男(東京大学名誉教授)

午後2時30分から4時まで

 

 ミュージアムトーク(企画展みどころ解説)

 10月25日(金)、11月1日(金)午後4時から30分程度